ケダモノのすすめ
内なる野性にしたがい日々を生きる男の独り言

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ある質問に対する答え

榎田さんってどうやって曲を作るんですか?

難しい質問です。
しかし出来るだけ分かりやすくお答えしたいと思います。

1、身体の中に得体の知れない感覚が芽生える。
2、それを聞き慣れた平均率の世界の音に翻訳する。
3、体裁を整え、聞き慣れた記号群としての音楽にしていく。

というような過程を経て、「曲」というものにしていきます。

これだけでは分かりにくいですね。
少しエピソード交えてお話しましょう。

エピソード1

高校三年生の時、オートバイの後ろに乗っていてひどい事故にあいました。
反対車線がひどい渋滞だったのですが、その中の一台が突然Uターンしようとして僕たちが走行している車線を塞ぐ形で止まってしまったのです。

ここだけの話ですが、その時はかなりの高速でこちらもぶっ飛ばしていたので、
止まりきれずにとても激しく衝突してしまったのです。

運良く、セダンタイプの車の左前輪の部分に衝突したので、運転していた友人は単車のハンドルの部分に股関節を引っかけて、ボンネットに万歳状態で叩き付けられただけですみました。(全身に入れ墨をいれたような青あざはできたけど)

さて、哀れなのは私の方で、
衝突した瞬間、運転していた友人の背中がカタパルトに変化して、
私はボリショイサーカスのピエロのように空中高くたたき出されてしまいました。

衝突した車をきりもみ状態で遥か飛び越え、激しく地面に叩き付けられてから視界が真っ暗になってしまいました。

狭いところに閉じ込められたような感覚に陥っている
得体の知れない音が鳴り続けている

すると突然、潮の香りが鼻の中によみがえってきました。
「ああ、海のそばにいるんだな」と思うと同時に、
鳴り続いていた「得体の知れない音」が突然人の声に変わったのです。

「大丈夫ですか!!?」

さっきまで鳴り響いていた得体の知れない音は、
その人が一生懸命語りかけてくれていた言葉だったのです。

あれは事故の衝撃で「自動翻訳装置」が一時的にダウンしたせいで、「宇宙音」のひとつである『人の声』を人の声として捉えることが出来なくなっていたのだと思います。

(ちなみに余談ですが、人の五感の内、最もプリミティヴなものは嗅覚だといわれています。人が生死の境を彷徨う時、この臭覚が働くかどうかで生き死にが決まると言われています。この話についても面白い事が沢山あるのですが、本件とは関係ないので別の機会に譲ることとします)


エピソード2

私は以前、明治生まれの薩摩琵琶の大名人に薩摩琵琶の指導をしてもらっていたことがあります。残念ながら私が習いはじめて間もなく先生が倒れられて、私の薩摩琵琶の鍛錬は初歩の初歩という段階で止まってしまいました。

その「初歩の初歩」というのは、平均率で慣れた耳を純正律の耳にしていくという稽古のことです。

我々が普段聴いている音階は「平均率」で作られたもので、1オクターブを12等分した音律を基本に作られています。ピアノやフレットや穴のある楽器がこれで作られています。

これに対して民族音楽等は純生律と呼ばれるもので、声やヴァイオリン等フレットのない楽器が奏でやすい音楽です。邦楽や民族音楽はこれで成り立っています。

先生との稽古は以下のように行なわれました。
正座対面で琵琶は構えるだけ、
そして先生の唄をなぞるように謡って行くのですが、
これが全然出来ない。
私は西洋音楽なら一度聴けば大抵そのメロディーやリズムを再現する事で出来ます。
複雑なものでも何回か聴けばそれを再現することができる。

しかし薩摩琵琶の唄は違いました。
音階は単調で、譜割も特に複雑とは思えないのですが、
これが全然出来ない。

間も取れなければ、メロディーも取れない。
私は非常な混乱と困惑に陥ることになったのです。

「なんで????」

先生がはじめに言った「今の人たちは平均率で耳が慣れてるから、最初は唄だけをきちんと聴いて、それを身のうちに叩き込みなさい」という言葉の意味がやっと理解出来ました。

いわゆる「耳が出来ていない」状態だったのですね。

私はその時、非常な困惑を感じると同時に、
「音楽とは何と深くて広い世界なんだ」といった感動を覚えたものでした。

私は感覚の「型」というようなものが出来て、初めて物事の本質に触れることができるといった事を沢山の人や事故(?)等の出来事から学んで来ました。

ですから感覚体験を体系化する事で自分の中に生まれてくる「型」をもとに、身体の中に生成してくる「得体の知れない感覚」を翻訳していく。

この自動翻訳機のことを「型」と呼んでもいいのかもしれません。

それが私の作曲法であると同時に、あらゆる物事を生み出すやり方なのだという事で、
最初の質問の答えとさせていただきます。



(ある講義のやり取りから抜粋)

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プロフィール

榎田竜路

Author:榎田竜路
Musician、Glocal Media Producer、真荷舟、Earth Voice Project代表社員、NPO横浜アートプロジェクト理事長、NPO映像情報士協会理事長、北京電影学院客員教授、Rainmaker Project代表、身体感覚技法追求。「野生と感性と知性を一つにして地球の未来に貢献します」

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