
朝の鎌倉はよく晴れている。
まだ冬の名残が消えきれない風に吹かれていたら、子供の頃のことを思い出した。
僕の父は送電線工事の会社を経営していた。僕の子供の頃は会社の創業期で、父も母も必死に働いていた。地方の山の中での工事が多かったので、母は水道のないところで50人くらいの人たちの炊事洗濯を全部ひとりでやっていたそうだ。当然寝る間もないほど働いているので、ついつい僕から目を離しがちになる。僕はその頃(今もそうだが)一所にじっとしていられないたちで油断すると丸太の橋をはいはいしたり、池に浮かんでいたり(!)したそうだ。これではたまらんということになって鹿児島の祖母のところにあずけられることになった。
その当時の鹿児島は本当に美しかった。植物も虫も何でも大きくて、水はそこかしこから湧いていてしかも美味い。川に泳ぎにいって最初に出会うのが大きな亀だったりする。テレビゲームも何もなかったけど楽しかった。心の底から愉快だった。お日様も風も風景も木も森もすべてが美しかった。
人生にぴったり寄添っていたという感じかな。。
本当に必要なものは自然が全て用意してくれている。
いらないものも欲しがらされて、欲しい欲しいと言っている。
変な世界になったもんだ。
今日の風に吹かれていると「もったいない」という言葉が聴こえてきた。
祖母の口癖だ。ものを粗末にするとひどく叱られた。
でも今日の風の中の声はこういっていたようだ。「人生を無駄遣いするなんてもったいない」と。
