まずカルガリーに飛び、そこからロッキー山脈越えでジャスパーまで車で旅行した。
そこで面白い体験をした。
ある滝(名前は忘れた)を見学に行った。
車をドライブインに止め。少し歩いて谷底に下るとその滝が観れるのだが、
その階段は急で手すりも粗末なものだった。
降りる時に本気でバランスをとらないと滝壺に真っ逆さまという恐ろしいコースだったのだ。
足はすくむし、滑るし、巨大な水はすぐ隣を落ちてるしと、
まるでインディー・ジョーンズの世界。
やっとの思いで滝壺まで辿り着いて滝を見上げた。
その時のその滝の美しと荘厳さと言ったらなんと表現したら良いのだろう。
冗談抜きで「命がけ」で降りて来た僕の感覚は研ぎすまされ、
五感すべてがそそり立つ思いだった。
その巨大な滝は僕の中に直に流れ込んできた。
僕と滝は分ちがたく一つになっていた。
しばし呆然。
そしてまたあの恐怖の「階段」を上っていった。
感覚を研ぎすましたければ、どうすれば良いのかということを僕はその時学んだのだ。
その日の夜、ポスターでよく見る緑色の湖のあるところで泊まった。
5月カナダは夜が来るのが遅く。
10時を過ぎてもまだ夕方のような明るさだった。
僕はジャズフェスに備えて湖のそばの丘の上でギターの稽古をしていた。
濃緑の湖と雪をかぶった岩山。現実とは思えない程の美しい景色を前に僕はひたすらギターを弾いていた。
すると風の向きが変わって、動物の匂い僕のいるあたりに運んで来た。
牛に似た匂い。
「カリブーかな?」と思ってなおギターを引き続けていると、
今度は全く異質の匂いがして来た。
それは初めて嗅ぐ匂いだったけど、
その匂いの元の生き物は巨大で凶暴だということが何故だか僕には分かった。
そんなに遠くでないところに「それ」はいるということを僕はその匂いから嗅ぎ取ることが出来た。
おそらくカリブーを追っているグリズリーだったのだろうと思う。
僕はギターを担いで静かに丘を降りていった。
感覚を研ぎすまさなければ生き残ることが出来ないこともあるという事を、
人間は死ぬ程思い知るべきだと思う。
自然が如何にかけがえのないものなのか、
我々自身もまぎれもなく自然なのだということを。
やっぱりケダモノ力がなくちゃね。
話にならない。
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