ケダモノのすすめ
内なる野性にしたがい日々を生きる男の独り言

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補助輪

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よく「あの頃に帰りたい」という言葉を耳にする。しかし僕には帰りたいあの頃というものが存在しない。もちろん懐かしいあの頃というものはある。だけどもしタイムマシーンかなんかあって、好きな時代に行けると言われても僕は決して行かないだろう。あの頃とは懐かしむためのものだからだ。

 今日はその懐かしい話。

 皆さん自転車に初めて乗れた時のこと憶えてますか? 一度乗れてしまうとなんでもないことだけど、乗れないうちは「なんでこんなものが立って走れるんだ?」「自分は一生自転車になんか乗れないんじゃないか?」と幼い胸を痛めた人も多いのでは?

 僕もその口で、なかなか補助輪をはずすことが出来なかった。友だちはどんどん補助輪を卒業していくのに、僕は補助輪無しでは1mも進むことが出来なかった。人に押してもらったりしても、押してもらっているうちは走れるんだけど手を離されるととたんにこけた。

 他の友だちは補助輪無しの自転車で颯爽と遊びにいくのに、補助輪をガラガラ鳴らしながら附いていくのは格好悪くてしようがなかった。

 しかし、そんな僕にも「その日」はやって来た。

 ある日、僕はいつものように校庭で自転車の練習をしていた。最初のうちはつき合ってくれていた友だちも僕のあまりの進歩のなさに呆れてどこかに行ってしまった。仕方なく僕は補助輪付きの自転車で一人黙々と練習を続けていた。しかし、手伝ってくれる友だちがいないので補助輪をはずした練習は出来ない。
 校庭を何かに憑かれたようにガラガラと音を立てながらただ走る。ふと校舎の時計を見ると4時になろうとしていた。「あっ、しまった」僕は慌てた。僕のその当時の門限は4時だったのだ。僕の母は時間に厳しい人で、約束の時間までに帰らないとひどく叱られた。当然すぐに帰らなければならない。しかし、御承知のように補助輪がついた自転車はあまりスピードがでない。それでも僕は全力疾走で校庭を飛び出して家に向かった。

 僕の学校は高台にあった。校舎を出るとすぐ長い直線の坂道があった。当時は確かまだ鋪装されていないデコボコ道だったと思う。その坂道をまっしぐらに駆け抜けねばならない。坂を下り出すと今まで出したこともないようなスピードになってしまった。僕は恐怖した。恐くてへたにブレーキもかけられない。

 しかし、なんかいつもと違う感じがする。良く分らないけど自転車に乗っている感じがいつもと違う。気付くと僕はどちらの補助輪も接地させずに2本のタイヤだけで走っていたのだ。それこそ飛ぶような気持ちだった。さっきまであんなに恐かったスピードも、もうコントロール可能の領域に入っていた。もっともっとスピードを上げるため僕は必死にペダルを踏み続けた。

 家についてから早速補助輪をはずしてみた。誰かに押してもらっていないと1mだって走れなかったのに、今度は簡単にこぎ出せた。ほんのちょっと前まで全然だめだったのに今思い出しても本当に不思議だ。
一体、何が起こったのか?

それも一瞬のうちに。

 僕の娘がハイハイを始めてしばらくしてある日突然立ち上がった。ゆらゆらとバランスをとりながらほんの一瞬だったけど一人で何にも掴まらずに立てた。その時、彼女は非常なハイ状態になっていて、歓喜の声をあげていた。それに味をしめたのか何度も立ち上がろうとするようになった。そしていつの間にか歩こうとし始めた。まだろくに立てないのに前へ進もうとするのだ。そしてそのうちよちよち歩きができるようになった。
するととたんにハイハイをしなくなった。

 よちよち歩きでどこへでもいこうとする。よっぽどハイハイで行った方が楽だろうに、何度も尻餅をつきながらやっていた。そしてやがて階段も自由に昇り降り出きるようになった。

 不可能が可能になる瞬間は突然訪れる。もちろん事前の努力も必要だ、いくら努力してもその瞬間が来ない限りそれは起こらない。「それ」を起こすためには努力とは別のファクトの何かがいるのかもしれない。

 あの時の補助輪は目に見えた。そして運良く外すことが出来た。でも僕は時々思うのだ。目に見えない補助輪がもしかしたらどこかでガラガラと音を鳴らしているのかも知れないと。

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榎田竜路

Author:榎田竜路
Musician、Glocal Media Producer、真荷舟、Earth Voice Project代表社員、NPO横浜アートプロジェクト理事長、NPO映像情報士協会理事長、北京電影学院客員教授、Rainmaker Project代表、身体感覚技法追求。「野生と感性と知性を一つにして地球の未来に貢献します」

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